ヌカチューさんぽ vol.10 昼飯屋

ヌカチューさんぽ

 東京都大田区の京急線「大森町駅」から徒歩10秒の場所にある「昼飯屋」。 “おいしく食べて、健康に。”がコンセプトの無化学調味料、砂糖不使用、グルテンフリーのカレー店で、レトルトカレーも展開しています。今回は店主の高瀬ご夫妻(しんさん、あきこさん)に、お店のはじまりや食への思いなどについてお話を伺いました。

コンセプト“おいしく食べて、健康に。”に込められた想いとは


「昼飯屋」は、食から健康を伝えるようなお店でありたいという想いのもと2020年2月にオープンしました。メニューはすべて無化学調味料、砂糖不使用、グルテンフリーのスパイスカレーです。

無化学調味料、砂糖不使用、グルテンフリーなど原材料に気遣いながら食事を提供する「昼飯屋」。料理に使う材料は“使わないものの基準”を決めて選ばれています。そして、お店の料理も、販売しているレトルトカレーも自分の家族に自信を持って食べさせられるものしかつくらないと決めているとお話されます。

食から健康を伝えるようなお店でありたいという考えは、一人目のお子様にアレルギーが発症したことが大きな転機になったそうです。お子様の症状が酷くなる一方でどうしていったらいいのか考えた時に、あきこさんはまず母乳の元となる自分の体の血液をきれいにしようと考えたそうです。そのために食事の見直しを始められ、それがお店のコンセプト“食から健康をつくる”という想いにつながっていました。

材料を決める判断基準がある中で選ばれた、こめ油


材料を選んでいくために油についても深く勉強されたあきこさん。調べていくと、油によって酸化や火に弱い、強いなど、さまざまな特徴があり悩まれたといいます。しかし、やっぱり日本ならば“こめ油”がいいだろうと考えて、いろいろなこめ油を試されました。その中でも、お米に対する想いや安心安全に関しての情報開示、グルテンフリーへの取り組みをしていたことから、つの食品のこめ油に注目してくださったそうです。

こめ油をカレーに使ったことで、お客様からは「胃もたれしない」「サラッとしてる」という声があるそうです。そしてカレーの具材のチキンからでる肉汁とも混ざっていても油っぽさがないとのこと。ご自宅でもこめ油を使ってくださっている高瀬さまは、油っぽいニオイやクセが少ないことからドレッシングやマヨネーズにもよく使われています。
そして、こめ油だからか店舗での食器洗いもベタつかず、排水溝掃除もベタベタしていないため掃除がしやすいことや、レトルトカレーを食べたお客様からもお皿にこびりつかないのが嬉しいという声があったそうです。酸化に強いこめ油の特徴を感じていただいて筆者も嬉しく思いました。

地産地消へのこだわりとお店のカレーを再現したレトルト


長らく飲食店で働かれていたしんさんは、以前働かれていたカレー店の先輩から“そろそろ自分の表現したいカレー店を開店してみたら?“という言葉とご家族の後押しで独立を決意されたそうです。

どの場所でお店を開店する場合もその土地の地産地消メニューを作りたいと考えられていたなかで、現在の大森の店舗に出会いました。大森は海苔の生産地だったことから「海苔カレー」が誕生しました。
海苔は製造時の切る工程で端材が出てしまい、それらは産業廃棄物として捨てられているそうでその海苔を再利用したいと考えて開発されました。大森に昼飯屋が生まれたからこそ出来た「海苔カレー」は今では一番人気となっています。

レトルトの「海苔カレーチキン入り」は「カレー・オブ・ザ・イヤー」のカレー大學健闘部門で特別賞を受賞され、年間10,000食も販売されています。

お店をオープンしてすぐに新型コロナウイルスによって人の動きに制限がかかってしまい、お店に来たくても来られないお客様から「遠くにいても食べられるものを作ってほしい」という声があり、レトルト開発のクラウドファンディングに挑戦されました。クラウドファンディングでは326万円の支援によって開発が始まり、レトルトのレシピでも材料にこだわり試作も20回ほど行って、1年かけて製品化に成功されました。
その取り組みによってお店についての口コミが広まり、今ではクラウドファンディングがきっかけで常連さんになっている方もいるそうです。お客様としては地元の方はもちろん、健康志向や感度の高い方、幅広いお客様がいらっしゃると言います。

地元の方がお客様になられているだけでなく、地域のスーパーでは昼飯屋のレトルトカレーやカレーに使っている材料も一緒に店頭に並んでいたことも。高瀬さまは、“地域の人とともに歩んでいくことを目指している” “いろいろなタイミングが重なってしまい大変な時期もあったなか、地元の方々に支えられた4年間だった”とお話されていました。

大森名物の「海苔カレー」


昼飯屋のある大田区大森町は海苔養殖発祥の地で250年もの歴史があります。
前述したように海苔をつくる工程で生まれる端材の海苔を再活用することから誕生した海苔カレー。深緑色のルウは香りのよい海苔の風味と多種類のスパイスと出汁や味噌などの複雑な味と柔らかい鶏肉がごろっと入っており、一度食べたらまた無性に食べたくなるような唯一無二のカレーです。
カレーの付け合せのぬか漬けやアチャール(玉ねぎの漬物)と交互に食べても、混ぜて食べても最初の味と変化が出ておいしいのです。

味はもちろん、高瀬ご夫婦の素敵な笑顔にも心から元気になれるような昼飯屋。東京・大森に訪れた際は是非、お立ち寄りください。「おいしく食べて、健康に。」を筆者も心に常に置いておきたいと思います。

【店舗情報】昼飯屋

※現在、一時閉店中。レトルトカレーの販売等は継続されています。