体によい油の選び方とは?

つの食品健康課

読みもの_体によい油

体によい油の選び方とは?

はじめに

ひと昔前はダイエットの敵と言われていた植物油が、近ごろではメディアで正しい情報が伝わりはじめ、体の機能を調整する大事なものと見直されてきています。小売店では健康に良さそうな植物油の取り扱いも増えて、購入する際に「何が違うの?」と迷う人も多いのでは?
おうちで食事を作る人が増えた今、より美味しく、より健康に油を使うための賢い選び方をご紹介します。

油には種類がある

「脂質」は三大栄養素のひとつだと理解しましょう

「糖質」「たんぱく質」と並ぶ三大栄養素のひとつである「脂質」に当たるのが油脂です。よいイメージを持たれない脂質は人が生きていく上で欠かせないもので、エネルギー源や細胞膜を構成する中心的な要素です。

脂質を構成する「脂肪酸」は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の大きく2つに分かれます。飽和脂肪酸は肉類やバター、パーム油、ココナッツオイルなどに多く含まれ、常温で固体なのが特徴です。もうひとつは植物油や魚の油に多く含まれる不飽和脂肪酸で、こちらは常温で液体なのが特徴。成人女性が1日に必要とする脂質の摂取量は30g程度とされています。

飽和脂肪酸の多い油には要注意

飽和脂肪酸は体に吸収されやすくエネルギー源になりやすい反面、摂りすぎると血液中の悪玉(LDL)コレステロール値を上げ、肥満や心筋梗塞、糖尿病をもたらす一因になると言われているので注意が必要です。

不飽和脂肪酸が含まれる油を選ぼう!

不飽和脂肪酸は主に植物油脂や青魚に多く含まれ、オメガ3、オメガ6、オメガ9の3種類に分けられます。

オメガ3は体内では生成できない必須脂肪酸で、その代表格がα‐リノレン酸。脳にとって最も必要な脂肪酸となり、細胞に栄養分を摂り入れて全身の細胞膜を若返らせ、免疫機能を整えたり、血液をサラサラにして血管をやわらかくするなどの働きがあるとされています。

オメガ6もオメガ3と同様にヒトが生成できない必須脂肪酸で、その代表格はリノール酸。白血球の働きを高めたり気管支を収縮させるなど体の調整作用や、血中コレステロール値を下げる働きがある一方で、摂りすぎると細胞膜が劣化し免疫の防御機能が過敏になることから、花粉症などアレルギーの原因や炎症・血栓などの要因になると言われています。

オメガ9は唯一ヒトが体内で生成できる必須脂肪酸となり、代表的なのはオレイン酸です。血中の悪玉コレステロール値を上げない穏やかな脂肪酸で、体内における酸化安定性が高いことから、一定量を摂ることが望ましいとされています。また、保湿力が高いことから、オレイン酸が豊富に含まれる油は古くから美容用途としても利用されてきました。

特徴を知って、よい油を選びましょう

「多価不飽和脂肪酸」オメガ3・オメガ6が多い油

亜麻仁(あまに)油

亜麻の種子からとった油で、海外ではフラックスシードオイルと呼ばれる亜麻仁油。亜麻は寒冷地での栽培に適しているため、世界総生産の約3分の1から半分がカナダで作られており、日本では北海道しか栽培に適した土地がないため、国産の亜麻仁油は貴重です。

亜麻仁油にはオメガ3系の必須脂肪酸であるα‐リノレン酸が植物油の中で最も多く含まれています。体内に入ったα‐リノレン酸の一部は、青魚でおなじみのDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)に変換されます。ほかにも抗酸化作用の高いビタミンEや女性ホルモン調整作用のあるリグナン、食物繊維などの成分も含まれるヘルシーな油なのです。

α‐リノレン酸の摂取量が少ないと、血液ドロドロやアレルギーの原因になると言われ、昔から日本人は青魚(イワシ・マグロ・サバなど)からこのα‐リノレン酸を摂ってきました。現代では若者を中心に魚離れが進んでいることもあり、とくに不足している脂肪酸のひとつがα‐リノレン酸です。
このほか脳細胞の活性化・高血圧予防・免疫機能の改善や促進・便秘改善など、α‐リノレン酸のもつさまざまな働きが論文で発表されています。

肝油に似たしっかりとコクのある味わいをもち、卵や納豆・アボカドなど食材や、ひじきなどの海藻類、しょう油などにもよく合います。
ただし熱に弱いので加熱をせずにドレッシングやあえ物にかけるなど生で摂るようにし、開封後は冷蔵庫での保存がオススメです。

ごま油

おなじみの茶色いごま油は、焙煎(ばいせん)したごまを圧搾し原料にしており、無色透明の太白ごま油は、しぼった生のごまを原料として作られます。ごま油は主に国内で生産・輸出されている一方、原料の99%をアジア・アフリカ・中南米諸国からの輸入に頼っているのが現状です。

リノール酸とオレイン酸がほぼ同じ割合で含有され、ごま油特有の抗酸化成分であるゴマグリナンやビタミンEを含んでいます。
サプリメントとしておなじみのセサミンはゴマグリナンの一種であり、肝臓の活性酸素を取り除いて肝臓機能を高める働きに加え、アルコールが代謝される際に発生するアセトアルデヒドと呼ばれる成分の生成をおさえる作用もあるため、悪酔い防止効果も期待できます。

焙煎したごま油は独特の色と香ばしさ、強いコクをもつ一方、生のごま使う太白ごま油は無味無臭のため、ケーキなどのお菓子作りに適した油です。

ごま油は高温で熱しても香りや味が変わらないため、天ぷらや炒めものなどの加熱調理に向いているだけでなく、炒めものの仕上げにサッとかけたり、自家製ラー油やねぎ油を作る際の香りづけとして使うのもオススメ。

ごま油は抗酸化作用が期待できる反面、過剰摂取はリノール酸の摂りすぎにつながるので注意しましょう。

「一価不飽和脂肪酸」オメガ9が多い油

オリーブ油

体によい油として人気のオリーブ油は、国内原料から作られているものはごくわずか。流通している大半がイタリア・スペインからの輸入品や原料のオリーブを輸入し国内生産されたものです。
植物油の中で唯一果実から作られるので、原料のオリーブの質が油の品質に直結します。

「バージン」と「精製」に大別されるオリーブオイル。バージンオリーブオイルは化学的処理をしていない油で、品質の高い順に「エキストラバージンオリーブオイル」、「バージンオリーブオイル」などにグレード分けされています。
精製オリーブオイルには、バージンオリーブオイルの酸味や匂いなどを取り除いて無味無臭にしたものや、精製した油にバージンオイルをブレンドしたものなどがあり、どちらも100%純粋なオリーブ油です。

一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸が全成分中70~80%と、植物油のなかで最も多く、ビタミンEやポリフェノール・クロロフィル・植物ステロールといった微量成分も含まれるオリーブ油。
オレイン酸は悪玉(LDL)コレステロール値を減らして善玉(HDL)コレステロール値は維持し、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞、高血圧など血管の病気予防が期待できるだけでなく、消化吸収を助ける働きもあるため胃もたれしにくい油といわれています。
オレイン酸以外の微量成分にも抗酸化作用・抗菌作用などの高い健康効果があり、エイジングケアや体内免疫を活発にするのだそう。

イタリア料理に使うイメージ強いオリーブ油は、意外にしょう油やだしとの相性がよく、刺身や和え物・冷やっこ・味噌汁などにかけても美味しくいただけます。揚げ物や炒めもの、デザートなどオールマイティに使えるオリーブ油。とくに香りのよいエキストラバージンオリーブオイルならパンにつけたりサラダやスープ、パスタの仕上げにかけるとコクが出るのでオススメです。

他の植物油に比べて緑色が強いのは、クロロフィルという成分によるもの。クロロフィルは光の当たらないところでは抗酸化性をもち、光に当たると油の酸化を促進させます。そのためオリーブ油は暗くて涼しいところで保管し、直射日光には当たらないよう注意しましょう。

こめ油(米油)

こめ油は、玄米を精米する際に取り除かれる米ぬかと米胚芽が原料。
日本の植物油は原料の大半を輸入に頼っている中で、唯一自給ができ遺伝子組み換えの心配がない国産米でつくられている油がこめ油。ただし玄米1合の米ぬかからできる油はたった2gで、人気が高まるにつれ国産の米ぬかだけではまかないきれなくなっているのが現状です。

オレイン酸とリノール酸が理想的なバランスで含まれ、ビタミンEの含有量が植物油の中でも高く、強力な抗酸化作用をもつスーパービタミンE(トコトリエノール)や、コレステロールの吸収をおさえる働きがある植物ステロールも他の植物油とくらべて豊富に含まれています。コレステロール値を下げる働くが植物油の中でトップクラスとされています。

含有される米ぬか由来の栄養素の中でも特筆すべきは、こめ油にしか含まれないγ(ガンマ)‐オリザノール。天然の酸化防止剤として食品や医薬品、化粧品などの原料としても使われ、自律神経の調整や更年期障害の緩和、抗うつ作用、認知機能の改善のほか、美肌づくりをサポートする働きも期待されている成分です。

酸化安定性が高いため加熱しても油が痛みにくく、油酔いの原因物質の発生も少ないので揚げものに最適。カラッと揚がり、冷めても美味しさが長持ちするだけでなく、鍋につくゴミやべたつく油汚れが少ないので、調理後のお掃除もらくになるため快適な料理を実現します。
ニオイや味のクセがほとんどなく軽くてサラッとしているので、ドレッシング・かけオイル・お菓子作りのほかにも炊飯時に少し加えるとしっとりつややか、ふわっとした美味しいごはんが炊き上がるのでオススメです。酸化に強いこめ油でも開封後は3カ月以内に使い切るのが理想的といわれています。

飽和脂肪酸を含む油

ココナッツオイル

ココナッツ種子の中にある胚乳から作られており、動物性油脂に多い飽和脂肪酸が約50%含まれる珍しい植物油です。飽和脂肪酸が多いココナッツオイルの主成分である中鎖脂肪酸はエネルギーになりやすく、燃焼される時に他の脂肪酸の燃焼も促すので体脂肪を減らす効果も。

独特の甘い香りをもち、お菓子づくりをはじめ、ヨーグルト・タピオカデザート・シリアル・フルーツなどにかけたり、コーヒーやココアに加える使い方以外にも、消化しやすい特徴もあるので胃腸の調子が悪いときや高齢者の食事に利用するのもオススメ。ただし摂りすぎると便がゆるくなることもあるので注意が必要です。

あなたにとってよい油を選ぶために

単体で健康によい油というのはなく、人によって必要な油は異なるため、まずはご自身や家族の食生活や体調などを考慮して選ぶことが大切です。
肉や乳製品、インスタント食品、ファストフードを多く食べる人、外食やコンビニ食品が中心の人は、飽和脂肪酸やオメガ6系の油を多く摂っていると考えられます。この場合はオメガ3系やオメガ9系の油でバランスを取りましょう。ただしオメガ3系の油は酸化しやすいため加熱調理には不向き。一方でオメガ9系の油は加熱に強く酸化が遅いので、調理によって使い分けることで脂肪酸バランスも良くなります。

体によいとされる油の中にも質のよくない油があるため、どのような成分がどれだけ含まれているか、どこで製造されているかきちんと明記された油を選ぶことも大事なポイントです。遺伝子組み換え原料を使用した植物油も見られるため、その点を考慮されることもオススメします。

まとめ

私たちの脳の半分は水、残り半分は油からできていると言われ、細胞や臓器も脂質でが構成要素になるなど、「油」はヒトにとって非常に重要な栄養素です。油にはしなやかでみずみずしい肌を保ったり、便通をよくするといった働きもあるため、よい油を選んで積極的に摂る意識が大切。

厚生労働省の調査によると、私たちが1日に摂る油脂の約8割が肉や加工品などに含まれる「見えない油」と言われています。普段から良質な植物油を使って自炊する、脂肪酸のバランスを考えて食事を摂るなど、油と向き合った食生活を送るのがオススメです。ただしどの油も熱量は1gあたり約9kcal、大さじ一杯なら約110kcalとカロリーは高めになるので、いくら良質な油でもとり過ぎには気をつけましょう。
よい油を選んで使うことが健康生活を手に入れる第一歩かもしれませんね。